2014年 秋アニメ総括
2014年10月~12月に放映された深夜アニメのレビュー
対象は当クールで終わった作品のみ。東京における月~日の放送順です。
神撃のバハムート
(監督:さとうけいいち、シリーズ構成:長谷川圭一、キャラデザ&総作監:恩田尚之、制作:MAPPA)
余りあるソシャゲマネーでスタッフをかき集めたとの噂通り、終始作画に抜かりがない。音楽は映像に合わせてオーケストラが演奏し収録した5.1chサラウンドという豪華さ。1クールでは少々キツいストーリーだったがよくまとめたと思う。主要キャラクターもそれぞれが非常に魅力的。近年あまり見ない正統派ファンタジーを見せてくれた。
魔弾の王と戦姫
(監督&シリーズ構成:佐藤竜雄、キャラデザ&総作監:椛島洋介、制作:サテライト)
魔法戦争から始まり連続5作品目のMF文庫Jアニメ化作品。学園舞台が多い同社作品の中では異色の戦記モノ。残念ながら戦場の様相を描くだけの体力はなかったようでところどころかなり間抜けな絵になってしまうのが惜しい。ナレーション解説やアイキャッチ解説など、世界観・戦略を分かりやすく説明しようとする努力の跡は見られたが、もう少し練って欲しかった。本編に登場しない戦姫たちがOPに堂々と登場していたのは2期への固い決意か。あとリュドミラちゃんが可愛い。
異能バトルは日常系のなかで
(監督:高橋正典、総監督&シリーズ構成:大塚雅彦、キャラデザ:山口智、制作:TRIGGER)
作画・音楽・脚本演出は流石の高水準。タイトル通り異能バトルより主人公とヒロインたちの日常と恋模様がメインに据えられているが、それだけで十分に話が成り立っているだけに異能や裏世界での戦争などの設定が余計なものに感じてしまう。また、普段意識的におバカな中二病患者を演じ、ここぞというときだけ紳士的になる主人公が全くヒロインたちの好意に気付かない鈍感野郎であるという設定にも難がある。言動からして全てが計算づくのように見えて、どうにも好感が持てない。7話の鳩子(CV:早見沙織)の長台詞はアニメ史に残るかも。
トリニティセブン
(監督:錦織博、シリーズ構成:吉野弘幸、キャラデザ:友岡新平、総作監:友岡新平&小谷杏子、制作:セブンアークスピクチャーズ)
非常にオーソドックスなハーレム系魔法学園バトル。主人公が堂々とスケベになったToLOVEると例えれば分かりやすいか。EDテーマがキャラクターソングになっていて輪番で変わるのだが、地味に良い曲が多かった。
ヤマノススメ セカンドシーズン
(監督:山本祐介、キャラデザ&総作画監督:松尾祐輔、脚本:ふでやすかずゆき、制作:エイトビット)
5分枠1クールから15分枠2クールに拡大した登山アニメ第2期。登山家による原作漫画にアニメスタッフの徹底した現地取材が加えられて、いわゆる美少女アニメながら登山趣味の入門教材としても高い完成度になっている。物語は主人公あおいの成長を本筋に置きつつ、幼馴染ひなたとの深い友情、これまで描かれなかったここなとかえでの背景を丁寧に掘り下げ、1期よりさらに奥行きを感じられる作品に仕上がっている。15分という時間的制約は、むしろ内容を濃密する方向でプラスに働いていると言えるだろう。世界観を彩る背景美術・音楽も実に素晴らしい。作品の舞台に設定された飯能市の風景は作中で忠実に再現されており、地元と西武鉄道の協力によってファンが舞台探訪しやすい環境が整えられている。心の中の汚い何かがすべて洗い流されるような清く正しく美しい作品。
大図書館の羊飼い
(監督&キャラデザ&総作監:Team ニコ、シリーズ構成:吉村清子、制作:フッズエンタテインメント)
演出・脚本に作画班が参加して複数指導体制で作るというあまり見ない制作手法を取ったエロゲ原作アニメ。作画によるポップな演出が幾分多かったが、他の部分では安定した作画を保っていた。ストーリーは多少詰め詰めだったが一応の収集は付けられた感。
棺姫のチャイカ
(監督:増井壮一、シリーズ構成:待田堂子、キャラデザ:新井伸浩、総作監:新井伸浩&諏訪真弘、制作:ボンズ)
正統派ファンタジー作品として1期から楽しんで見ていたのだが、角川作品の全10話縛りのせいか終盤の展開が性急で非常にもったいなかった。原作とは異なるだろうが、良いオチは付けられたのではないだろうか。途中の掛け合いなどもなかなか面白い良作。
デンキ街の本屋さん
(監督:さとうまさふみ、シリーズ構成:ふでやすかずゆき、キャラデザ&総作監:國之由里江、制作:シンエイ動画)
某同人ショップをモデルにしたオタクラブコメ。基本的にオタク関連ネタ、恋愛ネタ、女子力ネタの3つでぐるぐる回すだけなのでどうも一辺倒。職場モノというよりは大学のサークルのノリに近いが、げんしけんよりはずっとギャグ寄り。
白銀の意思 アルジェヴォルン
(監督:大槻敦史、シリーズ構成:佐藤竜雄、キャラデザ:岡勇一、制作:XEBEC)
オッサンがかっこいいハードボイルドなロボットアニメを作りたかった…という気概はなんとなく伝わってくるのだが、脚本演出の力不足が否めない。全体のストーリーに問題はないのだがとにかく単調で盛り上がりに欠ける。残念なオリジナル2クール作品だった。
PSHYCHO-PASS 2
(監督:塩谷直義、シリーズ構成:冲方丁、キャラデザ:浅野恭司、総作監:浅野恭司&髙田晃、制作:Production I.G.)
脚本を虚淵から冲方に交替させての2期。新キャラ、新しいシビュラの脅威などが登場するが、どれも1期のキャラクターたちより見劣りする。終盤の展開はかなり飛躍していて、キャラの行動も不自然。ラスボスかと思われた東金など全くの肩透かしで、槙島の足元にも及ばないような小物っぷり。グロさだけが際立ったガッカリな出来。劇場版は出来が良いそうなのでそちらに注力したのだろうか。
俺、ツインテールになります。
(監督:神戸洋行、シリーズ構成:荒川稔久、キャラデザ:森田和明、制作:プロダクションアイムズ)
バカな話を真面目にやる熱血バトルアニメ……だったはずなのだが作画崩壊で悪い意味で話題になってしまった。声優陣に力を入れる一方、作画面でカネとヒトと時間の不足を感じた可哀想な作品。
甘城ブリリアントパーク
(監督:武本康弘、シリーズ構成:志茂文彦、キャラデザ:門脇未来、制作:京都アニメーション)
ギャグとエロを軸に据えた遊園地経営再建のお話。しかしながらお色気描写はかなり抑制的で、ギャグもとりわけ面白いというわけではなく、取っ掛かりが少なかった。原作の恋愛要素まで徹底的に排除する必要はあったのだろうか。Free!と次回作の間の繋ぎの一本に感じられた。
TERRAFORMERS
(監督:浜崎博嗣、シリーズ構成:ヤスカワショウゴ、キャラデザ:筱雅律&木村智、制作:LIDENFILMS)
テンポが悪い。とにかく話のテンポが悪い。そして画面が暗い。バトルシーンが盛り上がってきたところで差し挟まれる回想や酒場での会話シーンが恐ろしいほどに視聴者を退屈にさせている。余計な部分を切り詰めればストーリーももっと先まで進められただろう。もったいない一作。
selector infected WIXOSS / selector spread WIXOSS
(監督:佐藤卓哉、シリーズ構成:岡田磨里、キャラデザ:坂井久太、制作:J.C. STAFF)
TCG販促アニメとは思えない内容のギスギスアニメ。演出と音楽で盛り上げるのが非常に上手い。しかし世界観やセレクターゲームの設定はかなりお粗末で、それが最終話付近の茶番っぽさの原因になっていた。作画は往時のJ.C.とは比べ物にならないほど安定している。OP/EDテーマは前後半ともに良い曲。
結城友奈は勇者である
(監督:岸誠二、シリーズ構成:上江洲誠、キャラデザ&総作監:酒井孝裕、制作:Studio五組)
まどマギ、幻影太陽の流れに連なるであろうダーク系少女戦隊モノ。絶望を溜めて最後に覆す、という大きな流れは悪くなかったものの、全員救済ハッピーエンドのために肝心の満開&散華の設定が破綻してしまい、それまでの積み重ねもすべて台無しになってしまった。日常回を削ってでも世界観の説明や終盤の話に充てるべきではなかったか。基礎的な理屈付けを疎かにしなければ名作になりえただけに惜しい。
ソードアート・オンラインⅡ
(監督:伊藤智彦、キャラデザ:足立慎吾、総作監:足立慎吾&山下祐、制作:A-1 Pictures)
1期と変わらずエフェクト作画の宝庫。デスガンが相手を殺すトリックの適当さや、ネトゲユーザーたちでユウキの最期を看取るシーンなどたまに原作者の感性を疑いたくなる部分があるのもまぁご愛嬌。キリトが段々メンヘラ臭くなってきたアスナとほぼ用済みのやっかみサブヒロインズに囲まれてトホホする図式はいつまで続けるつもりなのか。マザーズ・ロザリオ編のOPは傑作。
蟲師 続章
(監督&シリーズ構成:長濵博史、キャラデザ&総作監:馬越嘉彦、制作:アートランド)
シリーズを通して各話数とも素晴らしい安定感。前半は明るめ、後半は暗めの話が多かった。これほど音響にこだわるアニメはそうそうないだろう、演出における音の威力というものを叩き込まれるのが気持ち良い。来夏の劇場版が楽しみ。
失われた未来を求めて
(監督:ホソダナオト、シリーズ構成:川又り絵、キャラデザ:山門郁夫、制作:feel.)
終わってから見返すと割と丁寧な脚本だったと思うが、既にあちこちで使い古された感のあるタイムリープは意外性が無さ過ぎた。1話のみ3DCG風の作画で2話以降通常の作画だったのはどういう意図だったのか。
オオカミ少女と黒王子
(監督:カサヰケンイチ、シリーズ構成:平林佐和子、キャラデザ:藤岡真紀、総作監:藤岡真紀&安田京弘、制作:TYOアニメーションズ)
主人公がついた嘘を本当にするまでの物語。佐田さんがここ最近の少女漫画アニメの中では断トツで良いキャラをしていた。
天体のメソッド
(監督:迫井政行、原案&脚本:久弥直樹、キャラデザ&総作監:秋谷有紀恵、制作:Studio 3Hz)
かつて幼馴染だった少年少女たちが数年後に再会し友情を取り戻す、というこのライターが得意とするパターンの話をアニメでやってみた作品。あえて重要なことは言葉にせず雰囲気や感情表現だけで話を進めるので話の全てを理解するにはあまり親切な設計ではない。終盤の時間巻き戻しやノエルとの再会オチに至ってはもうそういうものとして諦めるしかないのだが、もうちょっと分かりやすくはならなかったか。一話から熱心に考察していた視聴者たちが徐々に「ノエル可愛い」しか言わなくなるのは悲しい光景だった。EDは楽曲もアニメーションもよくできている。
アカメが斬る!
(監督:小林智樹、シリーズ構成:上江洲誠、キャラデザ&総作監:中村和久、制作:WHITE FOX)
殺し屋集団による帝国転覆までを描くバトルアニメ。2クールかけてしっかり一本筋のストーリーをやってくれた、おそらく最近では貴重になったタイプの作品。90年代かゼロ年代前半っぽい雰囲気は懐かしく感じた。
繰繰れ!コックリさん
(監督&脚本:平池芳正、キャラデザ&総作監:大島美和、制作:トムス・エンタテインメント)
少女とイケメン妖怪たちによる日常ギャグアニメ。原作は知らないが、おそらく忠実にアニメ化されている。OP曲がやたら耳に残る。
ガールフレンド(仮)
(監督:林直孝、シリーズ構成:横手美智子、キャラデザ:堤谷典子、制作:SILVER LINK.)
第一話は恐ろしいほどに退屈だったが段々と学園日常系アニメの体裁を整えていって、終盤には終わるのが惜しい作品の一つになっていた。原作ゲームのキャンペーンの一環である以上全キャラを出演させなければならない事情は分かるが、もう少し登場人物を絞って集中的に出番を割り振る構成にした方がやはり良かったと思う。メイン三人(佐藤聡美、佐藤利奈、名塚佳織)の声の美少女オーラを改めて確認できてよかった。あとね、篠宮りさちゃんがね、可愛いんですよ。
個人的に好きだったのはヤマノススメ、蟲師、ガルフレ(仮)です。
アニメおもしれ~さいこ~ 2015年も楽しんでいこうな