知り合いの違法薬物購入未遂事件と、それに学ぶ有機化学の基礎の基礎
個人が特定出来ないように、シナリオを一部変更しています
警察と脱法ハーブとのいたちごっこ
2013年に「脱法」ハーブ対策として厚生労働省が類似構造を持った薬物の包括指定をしたのは記憶に新しいことです。 カチノン系については http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/info_250306.pdf
カンナビノイド系については http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002vkio-att/2r9852000002vkk5.pdf
このような指定のようです。
事件発生
ところで、知り合いが
https://www.caymanchem.com/app/template/Product.vm/catalog/12065
AKB48のアナログです。これと全く同じ化学構造のものを買う予定らしい。これはAKB48(アイドルグループの名前ではなく薬物の俗称です)にFがくっついただけ(←超素人な感想)のほとんど類似した物質だと思います。 そこで知り合いの化学者の方に色々と聞いてみました。
違法。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/scheduled-drug/ に引っかかる。
完全に違法です。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/meisho.pdf の【8】。
違法ですので、法律で指定された違法薬物を買ってはいけません。
違法ですので、法律で指定された違法薬物を買ってはいけません。
違法ですので、法律で指定された違法薬物を買ってはいけません。
当の本人は、相当反省していました。
違法性の根拠についての指摘
包括指定された構造とは ちがう (基本骨格が ナフタレン→アダマンタン、インドール→インダゾール) ので、こちらは論拠になりません。
故に、僕の最初の仮説(AKB48は包括指定に含まれる薬物なので違法だという指摘)は間違っていました。
というわけで、
僕の指摘は正しいでしょうか
違法という指摘は正しく、論拠はまちがっているので、「薬事法指定薬物モロやでガハハ!」が正しいツッコミになるでしょう。
有機化合物の修飾について
質問
ところで、別の質問なのですが、どうしてこのような有機化合物は、原子が1つ2つくっついたり別の原子になるくらいで人体に与える臨床的な影響に大きな差が出るのでしょうか。「トランスポーター」という専門用語がありますが、そのような原子を特異的に特定の場所に伝達してしまうためでしょうか。
回答
質問の範囲がひろすぎて般的な回答をしづらいので、ゆるふわに答えます。 "キラル分子"という、化学式上は完全におなじ物質でも、生体に対する作用がまったく異なる物質があります。有名な例ではサリドマイド。 サリドマイドはR体は催眠鎮静効果をもつ薬物ですが、L体は催奇形性をしめすので、1960年台におおさわぎになりました。つまり、この程度の差すら認識するメカ(※編集者注:メカニックスの略。人間の身体の薬物に対する反応はとても複雑だ、という指摘と同義。)になっているので、修飾(原子、分子の置換)ひとつで薬理作用が変わることは十分にありえる(変わらないこともある)
なるほど。他にも、以下のページが参考になると思います。
質問
もう1つ質問です。よく、特定の有機化合物の総称を記述する時に「~~~~~及びその塩類」という記載がありますが、これは何を意味しているのでしょうか。塩は有機化合物に結合しやすいのでしょうか。また、一般的に、塩類と化した化合物はどのような性質を帯びるのでしょうか。
回答
"塩"という訳語をあてた人を一回殴っていいチケットを進呈します(笑) 塩とはNaCl(食塩)のことではなく、ざっくり言って酸と塩基がくっついたものの総称です。 この手の物質は一般的に水に溶けやすい→人体に吸収させやすく、血流やリンパにのせて体内循環させやすい と言えるので、先の禁止薬物でも塩類のほうが薬理作用がはやくあらわれる傾向があります。
おわりに
以上です。何か質問があればコメント欄までお気軽に。ただし、違法薬物の購入方法や合成方法に関するコメントにはお答え出来ません。また、当記事は実際に起こった事実をモデルにしておりますが、一部事実と異なる箇所があります。