シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

名前を呼んではいけないあの活動

使用者と被用者の非対称な力関係の中に放り込まれてから三ヶ月が経過する。始まる前から馬鹿らしいと思っていた年中行事だが、実際に体験してみると馬鹿らしさで気が狂いそうになる。一生理解できないであろう自分という人間の性格や行動特性を観察して、実際に入ってみなければ決して分からないであろう会社の空気や社員の働き方を聴取し、自分に合う“かも”しれない企業に幾度もアプローチをかける、という一連の作業に凄まじい労力をかけて取り組まなければならない。無駄な労力は徹底的に省いてアニメを見ていたい自分にとっては、とにかく苦しい。受験勉強でもここまでは苦しくなかったと思う。

日頃もてはやされるトライ&エラーという考え方は、こと日本の労働市場では全く受け入れられない。一度入ってみて合わなかったら辞めるor辞めさせるという選択肢が終身雇用を前提とするこの国の労働法規ではなかなか認められないので、互いのことをよく知らないまま結婚するがごとき無謀な試みが新卒一括採用の名のもと毎年行われ、その犠牲者が失業率と早期離職率を押し上げていく。一度でもレールから外れれば人生終わり、なんてこともないのだが、一度もレールから外れずに生きてきた人間にはそう思えない。そういう視点がない。かくして戦線の熱は上がる。

「ポテンシャル採用」という無能で無芸な人間にとっては一見都合よく見えるシステムがどうも欺瞞的に見えるのは、非定量的な判断基準(定性的とでも言おうか)をもってふるいにかけられることに納得できない部分が大きいからだと思う。自分のからっぽさを取り繕うスキルの向上が、よりからっぽさを増進させているような気がしてならない。経団連はトチ狂った倫理憲章を定めるよりも、くじ引きで選考するローコストな採用形式を推奨すべきじゃないか。現状では意外と理に適っていると思う。

「どこに入ってもやることは同じ」「新人が何もできないことなんて百も承知」という父の言葉が延々と耳にこだまする。

若廃孤独 御社ひとつとて骨を拾わず