シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

憲法私見

近時、にわかに憲法改正が現実味を帯び、それに呼応するように憲法論争も盛んになっている。わが国の憲法の端緒と行末について、この場を借りて自分なりの理解を記しておこうと思う。

 

自由の防塁

かつて王政に虐げられた西洋の諸国民は、自己の存亡を賭けて、ひとつの変革を試みた。つまり、神授説に基づいた国王大権を否定した上で、新たな代表者を民主的に選挙し、人民の権利の実現を至上の目的とする、社会契約説に基づいた新たな国家を建設することである。

革命の時代のあと、この地上に最初の憲法が誕生した。王権を否定した人民は、自由は国家からの解放によってのみ実現されるとする近代立憲主義に立ち、治安とごみ拾い以外の何物もしない夜警国家を理想とした。最初の憲法はこの理念に従って、最大限の自由と、最小限の政府のみを規定した。

しかし、しばらく時を置いて勃興する資本主義の嵐は、国家の無能力を許さなかった。無制限の自由競争は、少数の資本家と多数の社会的経済的弱者という歪な社会構造を生み出し、もはや自由と権利は人民の手によってのみ実現されうるものではなくなったことが明白になったからだ。

これまで形式的な権利保障の観点から消極的であることを是としてきた夜警国家は、元来持ち合わせていた富の再分配機能をここで見出され、実質的な権利保障のため積極的に人民の生活に関与する福祉国家への転換を求められた。折りしも、工業化と都市化による公共事業の需要増加と度重なる大戦争によって行政機構は肥大化しており、新たに観念された社会権実現のため、国家がその活動領域を飛躍的に拡大させるまでに時間はそうかからなった。

かくして、資本主義と社会主義の狭間で修正を余儀なくされた近代立憲主義は、普通選挙以後の有権者たちと彼らに呼応する政治家たちの手によって、国家により実現される自由をも認めた現代立憲主義へと脱皮した。われらの憲法も、かかる歴史と原理に基づいて制定されたものであり、細やかな差異はあれど、西洋の諸憲法と根本的に同様の性格を有する。すなわち、個人の尊厳を最高の価値として、憲法が自由を保障する根拠たること、権力を抑制する根拠たること、かかる原理に反する一切の法令を無効とする根拠たること、もって万人が平和かつ民主的な社会の下で、個々の幸福を追求するために生命を全うできる基盤の整備を国家に義務付ける根拠たることである。

  

憲法 第五版

憲法 第五版

 

 

呵呵大笑