シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

国際情勢の変化と中国の侵攻

国際情勢の変化

 最近マスメディアで大きく騒がれていたロシアのクリミア併合、そしてウクライナ東部における新ロシア派の暴動は多くの人が識るところだろう。ウクライナ保安庁は「対テロ作戦」を掲げているが行政施設の占拠は現在も続けられている。地政学的に重要な土地であるクリミアの併合と新ロシア派の暴走は一様にロシアの後ろ盾があるものとは言い難いようであるが、今後も注意が必要だ。

 

 クリミア併合に対して、アメリカのバラク・オバマ大統領はロシアの暴走を許さないとした上でG8からロシアを除外する宣言を行った。しかし、事は簡単には行かない。近年のアメリカは内向きな政策が強く指摘されていて世界の警察としての地位をほとんど失った現状があり、またEU諸国は経済制裁を課すと言ってはいるがロシアは第3位の主要貿易相手国であり、特にドイツは経済関係が深くガス消費量の3割はロシア産だという。EUが提示する3段階の圧力も本当に効力があるのか疑わしい。

 日本は安部首相が「ロシアによるクリミア併合は明らかな国際法違反だ」と非難しているが、これまでの同盟国であるアメリカとの関係は昨年の靖国参拝や沖縄の基地移設問題から冷え込んでいるという見方もあり、それと対照的にロシアとの関係は改善されてきた流れがあった。しかしここで重要なのは、ロシアによるクリミアの侵攻を許容してしまうと中国の侵攻を助長する可能性があるということだ。

 現在の情勢は「新冷戦」と呼ばれているが、それはイデオロギーの対立ではなく経済という要素が複雑に絡み合っていることから来ている。また、国連安保理もほとんど形骸化し、アメリカの失墜、中国の台頭、まさに世界中のパワーバランスが変化しつつあると言えるのだろう。その点では、ロシアは現在の国際情勢をよく見据えた上でクリミア併合を行ったと言える。

中国の侵攻

 ここで問題にしたいのは、特に中国の動きである。昨年11月23日、中国国防省東シナ海上空に防空識別圏を設定した。防空識別圏というのは領空とは違い常時防空監視が行われる領域のことである。しかしながら中国は驚くべきことに、日本の領土である尖閣諸島の領空を含むことには飽きたらずに飛行計画を中国外務省または航空当局に提出するようにと言う公告まで出した。これは公海上の飛行の自由を制限する明らかな国際法違反である。つまり、中国は防空識別圏の名を借りて領空であるかのように振る舞いはじめたのである。

 中国の侵攻として記憶に新しいのは、フィリピンのスカボロー礁であろう。2012年には中国漁船8隻をフィリピン海軍が拿捕し対立を深め、後に中国側が一方的に「海南省三沙市」を宣言した。そして実効支配し軍事施設を建設しているという現状がある。これは全くもって他人ごととは思えない。

 これからも中国は第二列島線に接近するだろう。事実、領空・領海侵犯も常態化し小競り合いは続いている。すぐにでも中国と日本との間で軍事衝突が起こるのではないかという見方も強まってきている。確かに、先日の防空識別圏での一件ではアメリカが屹然とした対応をとり、中国側を強く牽制した。だが、内向きな傾向のアメリカがこの国際情勢において今まで通りの影響力を持つと見るのはいささか楽観的すぎるのではないだろうか。

日本のこれから

 では、日本はこれからどのように立ち回って行けばよいのだろうか。日本の抱える領土問題は尖閣諸島だけではなく、竹島北方領土と、どれもまだ解決の糸口は見えていない。最近では東京都で尖閣諸島を購入するための募金を募ったり、最近では終戦直後の色丹島を舞台としたソ連の侵攻、そして反戦を描いた「ジョバンニの島」というアニメーション映画もあった。日本国民の間でも、領土問題の深刻さ、問題意識が徐々に高まりつつあるのだろう。

 第二次安倍内閣になり経済政策は評価されているが靖国参拝や諸発言で、日本が右翼化していると言われている。だがしかし、国防という観点、また国際情勢の変化という観点から見れば、日本がアメリカの萎縮し空いた穴を埋める必要はあるのではないかと思う。

 終戦からもうすぐ70周年である。グローバル化と高度なIT技術の発展で世界は変わった。しかし、未だに紛争や軍事的衝突が世界各地で絶えることはない。これを根絶することは出来ないだろうとやるせない気持ちになってしまう。憲法9条に掲げた崇高な理念は、自衛隊という矛盾を孕み、歪曲した現状だけを作った。これを打破し、日本は正常な国にならなくてはいけない。不況は右傾を呼ぶというが、そういう問題ではなく、日本国民が考え、そして改革していかなければならない現状がすぐ目の前にあるのではないか。

 間違っても忌まわしき過去を繰り返すようなことにはなってはならない。だからこそ、より慎重に時間をかけてこれから日本がどう変わっていくべきなのか議論される必要がある。性急になりすぎてはいけない。だが、ここで挫けてはいけない。日本はひとつの国家としてあるべき姿を取り戻す努力を怠ってはならないのだ。そのために我々は自分で理解し、考えなければいけない。

 

 最後になるがこの記事はあくまで竜崎大の主張であり、シルバーペーパーの総意ではない。また恥ずかしながら浅学ゆえに間違っているところを含んでいるかもしれない。そういった場合は是非指摘して頂きたい。大切なのは議論を起こし考えることであるということは誰しもが思うところであろう。

 

竜崎大