シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

大きなアイデア、小さなアイデア

何かを作るとき、なんでもいいからとりあえず手をうごかそう、というマッチョな人間がいる一方で、ベストプラクティスを一通り頭に叩き込んでからでないと行動に移したくないという人がいる。

アプローチ的には前者のほうが正しいとも後者のほうが正しいとも言えないのだが、無知であることのほうが手を動かしやすいということは往々にしてある。私は物事に対して後者のアプローチを好むが、全くの無知の分野であったり時間的制約であったりとやむを得ない場合は前者のアプローチを取ることもある。 前者のメリットは、あとには何かが必ず残る、ということだ。(たとえそれがどんなガラクタであったとしても)後には何かが残る。

後者のアプローチでものづくりを成功させるのは一般的に言って難しい。人間が正しく自分の技量を見極めることは困難であるし、系統立てて物事を考えるのには時間がかかり、そして時間をかけて何かを学ぶということの最大の弱点は、かかった時間の分アイデアが肥大化してしまうことである。そのアイデアが実現可能であるためにはそれ自体つねに小さくなければならない。ここにひとつのボトルネックが発生する。

私達の素朴な直観に反するが、小さいアイデアを考えるのはおそらく大きなアイデアを考える数十倍以上難しい。

小さくよくできたアイデアというのは、現時点で実現可能であり、その時々の力量に合わせて拡張可能であるという二つの主要特性を満たさなければならない。つまるところ、これは出来上がったプロダクトの大きさは結果でしかないし、またそうあるべきだ、ということを意味する。端的に言って大規模なプロダクトというものは目標であってはならない。小さいものを大きくするのは簡単だが、大きなものをゼロから作るのは難しい。ゼロから大きいものは作れない。「小さいアイデア」が重要というのはまさにここに根差している。一方で、小さなアイデアは開始地点を間違うと将来の粗大ゴミを生み出してしまうことにもつながりかねない。最初のアイデアを小さく健全に保つのはそれだけで十分な技術が必要だ。