シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

新たな一党支配

早朝のNHK視点・論点」で現在の自民党一強体制とかつての55年体制の違いについてなるほどと思うような内容をやっていたので要約してみる。

野党の弱さ

2015年現在の野党勢力はおそらく戦後最弱といえる。旧社会党は保守勢力と対立する革新勢力として存在感を示し、左派知識人や労働者の立場から平和主義外交、社会政策を求めるなど野党ながらも一定以上政策立案に影響力を及ぼすことができた。ところが、今の民主党は最大野党でありながら自民党との違いや政策の方向性などを明確に示すことができず、有権者に選択肢を与えられていないばかりか政党間競争による権力のチェック&バランスの機能も果たせていない。他野党の公明・維新・次世代は与党に迎合的で、共産・社民は反対勢力として弱小すぎる。議席数の多寡も含めたあらゆる面で野党が対抗勢力を形成できていないのが今の国会である。

政高党低

与党の政治支配が以前より弱まり、官邸の指導力が高まっている。党組織の体系化が進んだことで派閥の群雄割拠状態から党執行部を頂点とする上意下達の体制になったこと、総裁派閥以外の牽制圧力が失われたことで派閥領袖や与党総務会による集団指導体制から総裁による単独指導体制に転換したことなどが理由として挙げられる。表立った権力闘争は総裁選の時期を除いて見られなくなり、総裁派閥の交替が実質的な政権交替の様相を呈していた時代よりも党内で競争が起きなくなった。これは野党の弱さに次ぐ権力のチェック&バランス機能の喪失である。

選挙制度

かつての中選挙区制は無所属候補でも地元と後援会の支援次第では十分に当選の余地がある仕組みだったが、小選挙区制では二大政党に属さない限りまず当選できないため、非主流派の議員が除名覚悟で党執行部に楯突くことはほとんど不可能になった。

検討

以上がコロンビア大学の政治学者ジェラルド・カーティス氏による分析だが、ほぼ首肯できる内容である。現在の政治構造では野党のみならず与党内の反対勢力すら官邸と党執行部には逆らえない。昨夏の内閣改造石破茂元幹事長が入閣か無役かを迫られ最終的に安倍総理の要請に応じて入閣したのは象徴的な出来事である。カーティス氏は55年体制時代のカネやコネにものをいわせる古い政治手法に比べれば、民主的正当性を持つ総理が主導する今の政治体制の方がより近代的で好ましいと見ている。議院内閣制の利点(権力集中)を最大限に発揮する上でも、こちらの方が機能的なのは間違いないだろう。

また、カーティス氏は比較的均質な社会を持つ日本には英米型の二大政党制ではなく北欧・西欧型の「緩やかな多党制」が適しているとして中選挙区制への回帰を提案している。戦後の日本型民主主義を評価する彼らしい意見だが、私としては安定した政権運営・政権交替を常態化させることをまず優先すべきであり、そのためにいずれかの選挙制度でなければならない、とは考えない。憲法日米安保原発などを巡る激論を収束させて、政党間のイデオロギーの距離を縮めることが肝要である。