シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

抜け殻を眺めていた

歳月人を待たず、そんな言葉を思い出しながら――生活の内側にちょっとした環境の変化があって、ちょっとした状況の変化があって、そうして久しぶりに自分の部屋の中身をじっくりと見返してみたのだけれど、長年積もり積もった色々な執念が堆積して、平積みになった小道具たちはまるで地層のようになってしまった。

遮光カーテンで遮られた薄暗いこの部屋の、埃をかぶった本たちは淀んだ橙色の仄暗い明かりをわずかに帯びて、私は背表紙を指でなぞりながら自分の過ごしてきた人生の流れを辿ろうとした。部屋に配置された物体を見て、思い出す過去の断片的な記憶をたぐり寄せ、私はどこか繋がりに欠けるフラグメンテーションされた自分の人生を他人事のような冷たい目線で見ていた。何を目標としていて、何を達成しようとしているのか分からない、極めて統一感のない光景を見渡している。

死んだ後に何が残るのか未だに分からない。死んだ後に何かが残るのかすら分からない。何のために生きているのかなんて誰にも分からない。誰も気にしない。そんなことを四六時中考えながら、子供の頃から漠然と何かになれればいいのにと思っていた。何かになれればいいのに、でも何になればいいのか分からなかった、そんなかつての人生の抜け殻の中に、かつて試行錯誤した末に散り散りになった自意識の経過を見る。あまりにも脆い生物の抜け殻、手を出せば手を出すほど収集がつかなくなるという当たり前の事実に気づいたあとの今となっては他人ごとでしか無いこの部屋のなかで、ただただ長生きはしたくないものだなと思った。