シルバーペーパー

秘密結社「シルバーペーパー」

虚空に顔

 小さい頃から怖いものが苦手で、アニメ「学校のコワイうわさ花子さんがきた!!

」のさっちゃんの話(さっちゃんの噂を聞くとその晩、寝ているところにやってきて鎌で脚を切り取られる)を幼稚園のときに見て以来、長い間布団から脚を出して眠ることが出来なかった。というか恥ずかしながら今でもかなり抵抗があることは否めない。あのシリーズはなんとも言えない不気味さがあるので是非一度視聴して見るといいかもしれない。

 

 ただ、怖いもの見たさというものは恐ろしい物で、異常な怖がりである私はその反動からか、いつの間にか「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」のパートスレを1から読破し、暇を持て余した高校時代には現行スレに張り付いてオカ板民としての日々を過ごしていたこともある。「※閲覧注意 霊障が起こっても責任は取れません」という文章も幾つも読んだ。人間の心理というのは己でも御し難いことがある。

 その頃からか記憶が定かではないが、視界の端に人の顔が映るような気がするようになった。だいたいよくいるのは廊下を歩いているときに通り過ぎる瞬間、扉が開いたが中が暗くなっているところにポツリと、腰くらいの高さのところに顔があり、ニタニタと笑っているのだ。それがいったいどういう顔なのか、正確に描写することはできない。なにしろ視界の端にしか現れないから直視したことがないのだ。ただ、居たり居なかったりすることがあるから「ああ、いま顔があったな」とぼんやりと考えることがある。別に夜だけではなく、昼間でも見かけることがある。そいつ(そいつら?)はだいたいニタニタしているような気がするのだ。

 先に言っておくが、幽霊の存在はあまり信じていない。いたらヤだな、くらいにしか思っていないしなるべく関わらないようにしている(肝試しなんてもってのほかだ)つもりだ。それに霊的体験はほとんどしたこと無いからおそらく零感(霊的体験しづらい体質)だと思われる。いや、もっというならおそらく脳内で生み出された映像なんだろうしそれを何かの条件のたびに繰り返しているだけなのだと思う。ただ今日、私が帰宅すると家に居た母親がぼそっとこんなことを言ったのだ。

「あんたが家に帰ってくるとバタバタうるさいし、なんか声が聞こえるし、存在感があるわよね。まるで何人か友達でも連れてきているみたいに」

 もしかしてこれを書き込んでいる後ろからそいつがこの文章を覗いているかもしれないという恐怖が少し嫌な汗を滲ませる。肩こりも一向に良くならない。

 仄暗い視界の端に浮かび上がる、顔。

 虚空に顔。

 

 

ひとつ言っておきたいのは、僕が統合失調症だとか何かの病だとか、そういうことは可能性がなくもないので、もし変なことを言っていたら気にして下さい。そして、できれば、たすけてください。

竜崎大