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TVアニメ『ピンポン』全11話一挙上映 トークショーまとめ

2014年7月19日深夜に池袋・新文芸坐で開催されたピンポン一挙上映イベントに行ってきました。 上映前に行われたトークショーは監督・湯浅政明さん、『アニメスタイル』編集長・小黒祐一郎さん、そして事前告知にはありませんでしたが、副監督・Eunyoung Choiさん、音楽・牛尾憲輔さん、チャイナ役・文曄星さんの三人を加えて、計5人の出演でした。


トークショー第一部(上映前)

監督・湯浅政明
  • 最初はそんなにウケないと思っていた
  • 制作現場はまさに修羅場、酷い出来になってもおかしくなかった
  • それでも現場の空気が悪くならなかったのは、ネットや知人からの反響が非常に良かったから
  • 副監督や総作監など少数のメインスタッフでなんとか仕上げていく現場は今ではほとんど見られない「昔ながらのアニメ制作現場」だった
副監督・Eunyoung Choi
  • スタッフ内で唯一と言っていい卓球経験者
  • EDアニメーション、卓球シーンの作画監督、背景、10話の演出などを担当
  • 監督とは10年来の付き合い
  • 湯浅監督が絵コンテでほとんど現場にいないので、何でも屋として現場を走り回った
  • 通常1話あたり250カット前後のところ、演出を担当した10話は400カットあったので本当に死ぬかと思った
  • 話数が下るにつれスタッフの卓球作画が上達していくので注目して欲しい、特に最初のインターハイと二度目のインターハイの違い
  • キャラデザ&総作監・伊東伸高さんは常人の数倍の作業量をこなす超人、彼が「終わらないです」と言ったときは本当に終わらないと思った
音楽・牛尾憲輔
  • メインの劇伴音楽では初の参加作品
  • アニメオタクでピンポン原作のファンでもあったので、参加のオファーがあったときは舞い上がった
  • 30曲程度の発注に60曲作って持ち込んだが、ギャラは変わらず
  • 最初の発注の打ち合わせ前から数曲作って持ち込んだ、とにかく精力的
  • ピンポンはメイン5人のキャラ押しということで各キャラのテーマ曲は監督の要望に従った
  • 制作中はマネージャーの目を盗んで頻繁に現場に行き、監督の言葉尻を捕えてはイメージに合った新曲を作って納品に行くという状態
  • 3話Aパートの冒頭、9話終盤は音楽が非常にマッチしているので注目して欲しい
  • 音源はすべて楽器ごとでバラバラにして渡していたので、音響スタッフによるアレンジが随所に見られる
  • 最終話Bパートはすべて新曲かリテイク曲、最終話全体で映画を意識した作りになっている
  • 監督は基本的に褒めない人だが、牛尾さんは褒めてもらわないと拗ねるので監督からのメールの文末にはとってつけたような「良かったです」が付くようになった
チャイナ役・文曄星
  • 本人は日本語ペラペラ
  • 最初はチャイナ役としてだけ参加したが、のちに中国語翻訳も担当
  • 日本人キャストと一緒に録るのは難しいので、彼らの収録後に中国語を別録り
  • 中国語が分かるスタッフが皆無なので、監督のセリフ割りをチャイナのコーチ役・程波さんと一緒に訳していった
  • 中国語はすぐに感情が乗ってしまうので、抑えるように演じるのが大変だった
  • チャイナ母が出るシーンでは親に甘えるような声を意識した

トークショー第二部(第3話上映後)

監督・湯浅政明
  • 1話から4話までは原作準拠で、5話以降から2度目のインターハイまではかなりオリジナル要素を入れた
  • TV放映版からの修正は400~500カット、卓球のフォームやタッチ部分をアニメーションにするなど技術的な修正がほとんど
  • 味のある線(手描き感のあるブレのある線)を徹底するつもりはなかったが、伊東総作監が強くこだわったのでこれで通した
  • 原作からアニメ版までの時代の変化はいくらか考慮している
  • 近年ペンホルダーからシェイクハンドが主流になるという重大な転換があったので、ペコのペンホルダー前陣速攻型に特別な意味合いを持たせている
  • 一家全員ペンホルダーのペコ家はかなり特殊でその描写も入れようとしたが、構想段階で忘れていたので抜けた
  • 映画『ピンポン』は高く評価している、しかし映画という表現媒体そのものはあまり好きじゃない
  • 映画を見たスタッフが多いので、それらも考慮した脚本・絵コンテを作った
  • COMPLETE BOXの外箱に描かれた点数表の数字は湯浅監督の誕生日、内箱の数字はBOXの発売日
  • 原作者の松本大洋先生は常に応援してくれた、BOXの数字も先生の案

初めての徹夜上映会だったので途中で寝るかもと思っていましたが、いざ本編を見るとアクビなんて出ようはずもないくらい面白かったです。2014年を代表する最高のアニメーション作品に仕上がっていると思います。「海、行くか…」の江上くんが喋るたびに観客席から笑い声が漏れたり、監督の質疑で当ててもらって号泣する女性ファンがいたりと、劇場ならではの空気も楽しめました。 『ピンポン』COMPLETE BOXは8月27日、湯浅監督の画集『湯浅政明大全』は8月上旬(下旬?)に発売予定です。

湯浅政明大全 Sketchbook for Animation Projects

湯浅政明大全 Sketchbook for Animation Projects

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アニメってのはな、めたくそ面白いんだぜ!!

呵呵大笑